11月20日(木)、信州大学の能勢博特任教授による特別公開講座を開講いたしました。
健康のために「1日1万歩」を目標に歩いている方は多いのではないでしょうか。しかし、最新の医学的知見によると、ただ漫然と歩くだけでは、私たちが期待するほどの健康効果が得られない可能性があることが分かってきました。
本学で開催された講演より、科学的根拠(エビデンス)に基づいた新しい運動処方「インターバル速歩」について、そのメカニズムと驚くべき効果をご紹介します。
なぜ人間には「特別な歩き方」が必要なのか?
そもそも、なぜ私たちは運動しなければならないのでしょうか。その答えは、人間と動物の決定的な違いである「二足歩行」にあります。
四足歩行の動物と異なり、重力に逆らって立つ人間は、血液の約70%が心臓より下に集まってしまいます。この血液を重力に逆らって心臓へ送り返すためには、「足の筋肉」がポンプの役割を果たす必要があります。
つまり、足の筋肉を適切に使わなければ、血液循環という生命維持の基本システムすら十分に機能しないのです。そこで開発されたのが、医学的視点に基づいた「インターバル速歩」です。
楽な運動をいくら続けても、体力は向上しない
散歩のような強度の低い運動を1万歩続けても、血圧への好影響は多少見られますが、肝心の「体力(持久力や筋力)」はほとんど向上しません。これは勉強に例えるなら、「簡単な足し算の問題を何千回解いても、数学の能力は上がらない」のと同じこと。「体力」という能力を向上させるには、体に一定以上の「負荷(強度)」をかける必要があるのです。
科学的解決策:メリハリのある「インターバル速歩」
では、どのような運動が最適なのでしょうか。その答えが「インターバル速歩」です。
基本のやり方
方法は非常にシンプルです。「早歩き」と「ゆっくり歩き」を交互に繰り返します。
- 早歩き(3分間):自分の最大体力の70%以上の力を使います。「ややきつい」と感じるスピードです。
- ゆっくり歩き(3分間):息を整えながら歩きます。
- これを1セットとし、1日5セット以上(早歩きの合計15分以上)行う。
推奨頻度
- 週4日程度
(※1週間で早歩きの合計が60分を超えれば、週末にまとめて行っても効果があることが分かっています)
実証された「マイナス10歳」の若返り効果
この「インターバル速歩」を5ヶ月間継続した研究では、驚くべき結果が得られました。
- 体力の向上: 膝の伸展筋力が約13%、持久力(最大酸素摂取量)が10%向上。
- 細胞の活性化: 加齢とともに機能が低下する「ミトコンドリア」の機能改善を示唆。
これらの数値を年齢換算すると、なんと「体力年齢が10歳若返った」ことに相当します。
さらに、体力の向上に比例して、高血圧、高血糖、肥満といった生活習慣病の指標が改善し、将来的な脳卒中や心筋梗塞のリスク低減、ひいては医療費の20%削減につながることも実証されました。
継続し、効果を最大化するためのヒント
どれほど効果的な運動も、続けなければ意味がありません。講演では、継続と効果アップのための重要なポイントも紹介されました。
活動量計などのIT機器を活用して運動強度を可視化すること、そして仲間と共に励まし合う(あるいは競い合う)環境を作ることで、9割を超える高い継続率が実現されています。
結論:健康寿命を延ばす鍵は「負荷」にあり
ただ歩くのではなく、メリハリをつけて体に適切な「負荷」をかけること。 この「インターバル速歩」こそが、健康寿命を延ばし、生涯自立した生活を送るための鍵となります。あなたも今日から「インターバル速歩」を始めてみませんか?
新潟産業大学では「インターバル速歩」を推進しています。興味のある方は新潟産業大学までお問い合わせください。


