『舞踊・社会学的考察による民俗芸能の社会統合の力-阿波踊りの企業連に着目して-』(多賀出版)が出版されました。
本刊行物 は、独立行政法人日本学術振興会令和7(2025)年度 科学研究費助成事業(科学研究費補助金)(研究成果公開促進費、課題番号:25HP5148)の助成を受けたものです。


A5判・195頁
税込4,400円
『舞踊・社会学的考察による民俗芸能の社会統合の力-阿波踊りの企業連に着目して-』
詳細は、多賀出版へ。
中村まい講師から本書を紹介いただきました。
本書は、観光資源化の成功例である阿波踊りに着目し、企業の踊り集団「企業連」の運営と、そこから生じる社会的関係について検討したものである。営利組織である企業が民俗芸能に参与することの社会的影響を分析し、経済振興という側面を超えた民俗芸能の価値と、新たな担い手としての企業の可能性を模索している。
阿波踊りは大正期以降、総合芸術から「踊り」へと集約され、観光資源化の過程で「見せる」ための様式化・画一化・技巧化が進んだ。その結果、地域住民の踊る場が減少するという課題も生じている。現状、企業連は通年で活動を行う一般連や学生連に比べ、観客の多い有料演舞場での出演機会が多い。練習量の確保が難しい企業連が、いかにして「見せ物」としての質を担保し、運営を維持しているかを考察した。
他地域の祭り(三原やっさ踊り、よさこい鳴子踊り)との比較から、阿波踊りの企業連は、企業内外の多様な参加者を包含する寛容な運営形態を持つことが明らかになった。これを可能にしているのが、習熟度の異なる参加者を配置し、他連との合同出演も容易にする「隊列」という阿波踊り特有の舞踊特性である。この特性により、企業連は多層的な人間関係を構築・強化する場となっている。
企業は単なるスポンサーではなく、自ら民俗芸能に深く参与することで、技術や人材の需要を創出している。こうした企業と伝統的な担い手との協働関係は、近年の祭りが直面している「資金不足」や「担い手不足」という深刻な問題を解決する有効なモデルとなる可能性を秘めている。

中村まい 講師
お茶の水女子大学大学院博士後期課程修了
専門分野は舞踊学